いじめの防止等のための基本的な方針
1 はじめに
いじめは、被害にあった生徒の人としての誇りや尊厳にかかわる重大な問題であり、許されない行為である。いじめに関係した生徒に自覚がないとしても、その行為は時として命に関わる事態に進展する可能性がある。
いじめは「どの子にも起こりうる」「どの子も被害者にも加害者にもなりうる」「見えにくく、発見されにくい」ものである。学校ではこれらのキーワードを元に、これまでもいじめの未然防止・早期発見・早期対応に向けた取り組みをしてきたところである。
平成25年9月に「いじめ防止対策推進法」が施行され、第13条で「学校の実情に応じ、当該学校におけるいじめ防止等のための対策に関する基本的な方針を定める」ことが学校の義務とされた。これを受け、本校では今までの取り組みを体系的にまとめ、計画的に実践するための基盤として「都田中学校いじめの防止等のための基本的な方針」を策定した。国や市の基本方針を参考にして、本校におけるいじめ防止等のための対策としたい。
この方針に沿っていじめ防止に取り組むことで、今まで以上に質の高い教育活動が展開できると考えている。生徒と保護者、教職員、地域の方が一丸となって、いじめを含む様々な問題に対し、前向きに取り組んでいきたい。
2 基本的な考え方
(1)いじめの定義
本校では、いじめ防止対策推進法第2条に則り、「いじめ」を以下のように定義づける。
(2)いじめの理解
個々の行為がいじめにあたるのかどうかの判断は、表面的・形式的なものでなく、いじめを受けた生徒の立場に立つことが必要である。嫌がらせやいじわる等の「暴力を伴わないいじめ」は、多くの生徒が入れ替わりながら被害者や加害者になることがある。「暴力を伴わないいじめ」であっても、何度も繰り返されたり、集中的に行われたりすることで「暴力を伴ういじめ」以上に生命又は身体に危険を生じさせることがある。
からかいやいじわる、いたずらや嫌がらせ、陰口や無視等は個々の行為だけを見れば、好ましくはないものの、「ささいなこと」「日常的によくあるトラブル」と考えられやすい。しかし、そうしたささいに見える行為をしつこく繰り返されることで、いらだち・困惑・不安・屈辱・孤立・恐怖等がつのり、時に死を選ぶほどに被害者が追い込まれることがある。だからこそ、いじめを重大な問題として捉えていく必要がある。
(3)基本的な考え方
「暴力を伴わないいじめ」等は違法・触法でないことが多いため、気づかずに見過ごしたり、気づいてもふざけやよくあるトラブル等と判断したりして見逃しやすい。表面に見えない心理的・精神的な被害を重大な問題と捉えることが大切であり、「どんなささいな予兆も見逃さず対処する」という「早期発見」「早期対応」の姿勢を重視していくことが重要である。
そのため、いじめの背景にストレスやその原因となる要因等が存在することに着目し、それらの改善を図ることで、きっかけとなるトラブルを減らし、エスカレートを防ぐ「未然防止」の取り組みに力を注ぐことが有効である。
本校の生徒同士や生徒と教師の仲の良さを最大限の強みとし、いじめのない学校づくりを推進することを基本的な考えとしたい。
3 いじめの防止等のための対策
(1)方針の策定・見直し
「はじめに」で述べたように、平成25年9月に「いじめ防止対策推進法」が施行され、第13条で方針の策定が示されている。これを受け、今までの取り組みを体系的にまとめ、計画的に実践するための基盤として「都田中学校いじめ防止基本方針」を策定した。
この基本方針は生徒の実態に即して、毎年見直しを行い、より現実に即した基本方針となるようにする。
(2)組織の設置
本基本方針を実行に移す際の中核を担う組織として、校内に「いじめ対策委員会」を設置する。
「いじめ対策委員会」は、以下の内容を行う。
- ①いじめの未然防止・早期発見・早期対応に関する取り組みの企画や実施
- ②取り組みが計画通りに進んでいるかのチェックや成果の検証
- ③教職員や保護者・地域の方のいじめ防止等に関する資質向上を目指した広報・研修活動等の実施
- ④本基本方針の見直しや改善
「いじめ対策委員会」は、以下の委員で構成するが、必要に応じて教員以外の特別委員を加えることができる。特に、地域との連携を図る際は「都田中学校区いじめ対策連絡協議会」会長並びに会長代理に入っていただくこととする。
委員長 | 校長 |
---|---|
副委員長 | 教頭・生徒指導主事(いじめ対策コーディネーター) |
委員 | 各学年生活担当・養護教諭 |
特別委員 | スクールカウンセラー・SSW |
(3)未然防止
浜松の教育のキーワード「心の耕し」に努めることで、未然防止を図りたい。年度当初の「学級開き」について具体的な取り組みを教員が共有し、どの学級でもひとりひとりが大切にされる、居心地の良い学級となるように努めていく。また、研修を通して道徳の授業や学級活動、総合的な学習の時間を効果的に活用し、どの生徒も居場所のある学級づくりを目指す。生活ノート「ふれあい」に赤ペンを入れることで、担任とのより良い関係を築き、生徒が安心して相談できる体制づくりに努める。
平成26年度は学校経営目標を『「生徒が主役」の学校づくり』とした。生徒ひとりひとりが主役になる場面を意図的に設け、豊かさやたくましさを身につけさせたい。そのために、縦割り集団を活用し、上級生が下級生を指導し、面倒を見る。そして、下級生は上級生を尊敬し、憧れることを、本校ならではの未然防止策として、さらに力を入れていきたい。
(4)早期発見・早期対応
早期発見、早期対応をするために、日ごろから生徒の様子に目を配り、小さな変化も見逃さない目を持つようにしたい。特に、生徒が安心して相談できる人間関係を構築するように努めなければならない。
いじめと疑われる行為を発見した場合、その場ですぐにその行為を止め、事情を把握する。また、生徒や保護者、地域の方からの通報や相談があった場合は、真摯に傾聴し、ささいな兆候であっても早い段階から丁寧に関わっていく。
被害にあっている生徒やいじめを知らせてきた生徒の安全を優先し、「いじめ対策委員会」で組織的に関係する生徒から事情を聴き取り、事実関係を確認する。その後は、事実関係を浜松市教育委員会へ報告するとともに、最も効果的な方法で早期対応に努める。加害生徒に対しても、健全な人格の発達に配慮して事実関係を聴取し、自らの行為の責任を自覚するように働きかける。被害・加害双方の保護者に事実を報告し、協力して対応を図っていく。
触法性のあるいじめの加害行為については、都田交番や細江警察署生活安全課・少年サポートセンター等に相談し、各機関と連携した対応ができるよう積極的に支援を求めていく。
(5)地域との連携
平成7年度に都田中学校区健全育成会下部組織に「いじめ対策連絡協議会」が設けられた。2度に渡って会則等の改正も行われ、「地域ぐるみでいじめの撲滅と児童・生徒の人権を守ること」を目的としている。地域の目で生徒の様子を見守っていただくとともに、いじめ事案が発生した場合は必要に応じて連絡協議会との連携を図っていく。
(6)ネット上のいじめへの対応
ネット上に不適切な書き込み等があった場合は、書き込んだ生徒の特定を急ぐとともに、保護者の責任において書き込みを削除するよう強く要請する。また、機会を設けて、ネット上のトラブル防止について積極的に発信していく。
(7)いじめ対応の流れ

4 重大事態への対処
(1)重大事態とは
国や浜松市の「いじめ防止等のための基本的な方針」に基づき、重大事態を以下のような場合とする。
- ①いじめにより、子どもの生命・心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき
- 子どもが自殺を企画したとき
- 子どもが精神性の疾患を発症した場合
- 子どもが身体に重大な傷害を負った場合
- 子どもが金銭を奪い取られた場合
- ②いじめが原因で、子どもが相当の期間(年間30日程度)学校を欠席している疑いがあるとき。あるいは、いじめが原因で、子どもが一定期間連続して欠席しているとき
- ③子どもや保護者から、いじめにより重篤な状態に陥ったという申立があったとき
(2)対処の仕方
国や浜松市の「いじめ防止等のための基本的な方針」に基づき、重大事態を感知した場合、学校の「いじめ対策委員会」を通じて、ただちに浜松市教育委員会に報告し、その指示を仰ぐ。
浜松市教育委員会は、浜松市の「いじめ防止等のための基本的な方針」に則り、速やかに「いじめ対策専門家チーム」を招集し、事実関係を明確にするための調査を開始する。この方針では、学校がいじめを受けた子どもや保護者に行う調査や情報提供を指示・監督し、「いじめ対策専門家チーム」の見立てや判断を子どもや保護者に適切に情報提供することとなっている。
また、市長は、必要に応じて附属機関を設けるなどして重大事態の再調査を行うことがあり、市長の権限及び責任において、当該学校への重点的な支援、生徒指導専任の教職員の配置、心理・福祉等の外部専門家の派遣等の措置をとる場合がある。
5 おわりに
この基本方針はひとつの指針である。今後、今までに対処したことのないようないじめ問題が起こらないとも限らない。しかし、学校経営目標でもある『「生徒が主役」の学校づくり』を推進することが、本校からいじめをなくすことにつながると確信している。
本校職員はこの基本方針を基に、常に生徒に寄り添い、ともに学ぶ姿勢を持ち続けたいと考えている。謙虚に学び、気づき、支え合う職員集団が、生徒にもより良い影響を与えると考えているからである。いじめのない、「生徒が主役」の都田中学校を築くために、これからも努めていきたい。